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企業事例記事

女性専用設備を整備した企業の事例を紹介します

事例1 女性ドライバーが5名から20名へ。
都の助成金を活用した環境整備と働き方改革の取組

豊玉タクシー株式会社

お話を伺った方
採用担当 島川 すずか様
女性専用設備
休憩室 仮眠室 ロッカールーム
整備に要した期間
約1年

豊玉タクシー株式会社は、タクシー事業を中心にハイヤー事業などを展開し、約300名のスタッフが在籍している企業です。そのうち約280名がドライバーで、近年は女性ドライバーの採用・定着に注力しています。
同社では、東京都の「女性の活躍推進助成金 ※1」を活用し、老朽化していた建物を女性専用スペースへと改装。休憩室や仮眠室、ロッカールームなどを整備し、女性ドライバーが安心して働ける環境づくりを進めてきました。さらに、ライフスタイルに合わせて選べる柔軟な勤務体系も導入したことにより、約2年で女性ドライバーが5名から20名まで増加。全体の離職率も20%から10%へ改善するなど、採用・定着の両面で成果につながっています。

※1:「女性の活躍推進助成金」は令和7年度で新規募集を終了しました。なお、令和8年度からは、「女性活躍のための施設整備助成金」を開始しています。

温かみとやわらかさを感じる色調の休憩室

コロナ禍をきっかけに、「誰もが働きやすい職場づくり」が課題に

コロナ禍のタイミングでドライバー数が大きく減少し、「どのように人材を確保し、定着につなげていくか」が社内の大きな課題となっていました。同時に、女性のお客様やマタニティ送迎など、女性ドライバーに対するニーズの高まりを実感する機会は増えていました。そこで、こうしたニーズに応えるためにも、女性ドライバーの採用を進める必要があると考えたのです。

しかし、タクシー業界は「隔日勤務」が主流で、実働で15時間ほど乗務し、翌日が「明け休み」と呼ばれる勤務明けの休息日になります。この働き方は長時間勤務を前提とするため、子育てや介護と両立するにはハードルが高いと感じられる方も少なくありません。そのため、タクシー会社の多くは男性ドライバーが中心となる傾向があり、当社も以前は女性ドライバーが5名しかいませんでした。

こうした課題を受け、現在のような環境整備と働き方改革に取り組み始めました。その背景には「女性が安心して働ける環境を整えれば、結果的に“誰にとっても働きやすい会社”につながるのではないか」という考えがあります。

ライフスタイルに合わせて選べる勤務体系を導入

そこで、働きやすい職場づくりの第一歩として、まずは勤務体系の選択肢を増やすことから始めました。当社では現在、隔日勤務だけではなく、昼日勤や夜日勤、週休3日制など、ライフスタイルに合わせて働き方を選べるようにしています。子育て中の方であれば、朝は少し遅めに出勤したり、お子さんの行事に合わせてシフトを振り替えたりでき、急なお休みにも柔軟に対応しています。「タクシードライバーは、長時間勤務で大変そう」というイメージを持たれる方も少なくありませんが、実際には個人の裁量で動ける部分が多く、働き方を工夫すれば、むしろご自身のライフスタイルに合わせやすい仕事です。
ただ、働き方の整備を進める一方で、休憩室や更衣室などの環境面は、まだ十分といえない状況でした。

女性が安心して働ける環境づくりのため、助成金を活用して専用施設を整備

以前は、女性専用更衣室といっても、倉庫の一部を使っていたため、1人がやっと着替えられる程度のスペースしかありませんでした。休憩室も仮眠室も男女共用で、深夜勤務後に女性ドライバーが安心して休める場所がなかったのです。

当時は社内に女性ドライバーが少なかったこともあり「しかたないよね」という雰囲気でしたが、「これから本格的に女性採用を進めていくなら、この環境のままでは難しい」と感じていました。だからこそ、「女性専用の休憩室や仮眠室は必要だ」と改めて実感したんです。

ただ、中小企業としては費用面の負担が大きく、必要だと分かっていても、すぐには踏み切れないのが正直なところです。そうしたタイミングで助成金の存在を知り、ようやく具体的に環境整備を進めることができました。

約1年かけて、女性専用の休憩スペースを整備

女性専用の休憩スペースを確保するため、これまで倉庫として使っていた自社建物の2階部分をリフォームしました。建物がかなり老朽化していたこともあって、床の補修も含めた大掛かりなリフォームとなり、完成まで約1年を要しています。

落ち着きのある色味の壁紙を取り入れた仮眠室

現在は、休憩室、仮眠室、ダイニングキッチン、トイレ、シャワールーム、ロッカールームを備えたスペースへと生まれ変わっています。内装は、女性ドライバーの意見も取り入れながら進めました。壁紙やカーテンの色味、部屋ごとの雰囲気にもこだわり、「安心して過ごせる空間」を意識。さらに、ロッカールームは駐車場側から見えないよう厚手の遮光カーテンを設置し、建物とロッカールームの両方に鍵を設けるなど防犯面にも配慮しました。そのほか、手すりの設置や段差の調整など、バリアフリーにも気を配っています。座り仕事のため腰痛を抱える方も多く、年齢を重ねても働きやすい環境づくりは大切だと感じています。

開放感のあるロッカールーム
ロッカールームへの入室にはナンバーロックを採用

女性ドライバーは5名から20名に増加。離職率も半減

この事業を活用し、本格的に女性採用や環境整備に取り組み始めてから約2年が経過しました。その間に16名の女性ドライバーを新規採用しましたが、その後の退職者は1名のみです。働きやすい環境づくりを進めたことで、女性ドライバーが5名から20名まで増えました。また、全体の離職率が20%から10%まで低下しています。働き方の柔軟性や、安心して過ごせる休憩環境の整備が、人材確保や定着につながったのだと実感しています。

業界の懇談会などでは、「女性ドライバーが増えたよね」「女性専用休憩室の記事を見たよ、いいね」と声をかけていただく機会が増えました。社外から見ても、会社の変化が伝わっていると感じています。

「女性が働きやすい会社」が、結果的に誰にとっても働きやすい会社になる

女性ドライバーの増加によって、社内全体にも大きな変化がありました。男性ドライバーからは「職場が明るくなった」、「女性が増えて雰囲気が変わった」という声を聞きます。また、男性ドライバーの女性ドライバーに対する接し方も、以前より自然に配慮できるようになってきたようです。若い女性ドライバーが売上ランキングの上位に入るようになり、ベテラン男性ドライバーから「負けていられない」という声が出るなど、お互いにとって良い刺激になっているのを感じます。こうした変化を通じて、「女性が働きやすい会社」が、結果的に誰にとっても働きやすい会社につながるのだと実感しています。

今後は、空いているロッカー11台が埋まるくらいまで女性ドライバーを増やしていきたいですね。ただ、「女性だけを優遇したい」という考えではありません。育児や介護など、さまざまな事情を抱えながら働く方が増えている中で、「誰もが無理なく働ける会社」にしていくことが重要だと感じています。実際に、当社では男性の育児休業取得率が高く、社長も育休を取得しました。現段階で産休取得者はいませんが、これから若い世代が増えると、産休の利用者も増えてくるはずです。一人ひとりの事情に応じた柔軟な働き方を選択できる環境を今後さらに整えていきたいと思います。

当社では現在、「タクシードライバーって、実は身近な仕事なんだ」と感じてもらえるような活動も行っています。女性向け転職イベントへの参加はもちろん、SNSでの情報発信にも力を入れているんです。SNS運用を得意とする若手女性ドライバーが、TikTokの企画や動画制作を担当してくれています。こうした取組をきっかけに、当社だけではなく、タクシー業界全体で女性ドライバーが増えていったら嬉しいですね。

豊玉タクシー株式会社
事業内容/一般旅客運送事業
従業員数/約300名(ドライバー約280名、うち女性ドライバー20名)※2026年6月現在